紅葉真っ盛りの高尾山へ

高尾山「もみじ台」の紅葉。

秋も終盤となる11月25日、東京を離れている間、訪れていなかった高尾山へと久しぶりに出かけた。テレビの報道では、連日、紅葉目当ての観光客が押しかけて大混雑だとか。行列につき合わされるのはいやなので、平日を狙って出かけた。しかし、その目論見は打ち砕かれる。京王線高尾山口駅前には待ち合わせをするハイカーの群れ。さらにケーブルカーの山麓駅では長い行列が出来ていた。

私は全行程、歩くつもりでいたので、メインルートの1号路を登り始めた。冬の太陽は高度が低いこともあり、しばらく日差しの届かぬ森を黙々と歩く。標高387mの金毘羅台まで登ると、周囲の木々に日が当たるようになり、色づいたモミジが鮮やかさを増す。ここからは尾根道。緩やかに登りながら高度を上げてゆく。

高尾山は広葉樹林帯と常緑樹林帯の境目にあり、杉の木も多いことから、全山紅葉とはいかない。登山ルートを歩いていると、所々に赤く色づくモミジが登山客の目を楽しませてくれる。

ケーブルカーの駅と展望台のある霞台まで来ると、急に人が多くなる。構わず先に進み、色づいたモミジを見つける度に立ち止まり、カメラを向ける。しかし、薬王院までは杉並木が続くため、ズンズン歩く。人のいない早朝、霧でも出ていれば絵になるのかもしれないが、引っ切りなしに人が行き交う杉並木は撮る気がしない。

まだ、色づいてはいないが、太陽の光に照らされ、中央のモミジの葉が美しく感じられたのでシャッターを切った。

カメラは愛機、OM-D E-M1 MarkⅡ。レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO。C-PLフィルターを付けたままにしている。ピクチャーモードをVividにしていることもあり、EVFで見ても鮮やかすぎる写りになりがち。地味な紅葉写真になるよりはいいだろう。RAW現像は彩度はいじらず、明るさやコントラストを調整するだけに留めている。

ピクチャーモードの「Vivid」+C-PLフィルターの効果で、最大限に彩度が高まった真っ赤なモミジ。赤が飽和しかけるギリギリのところで踏みとどまった。

だいたい日本の著名な山の山頂やその付近には神社仏閣がある。神社であれば山そのものが信仰の対象であったり、神事を行う場所として社が建てられたり、寺であれば、修験道などの山岳仏教との繋がりが考えられる。高尾山には薬王院という真言宗智山派の寺がある。御本尊は薬師如来で、飯綱権現も祀られている。前者の薬師如来は、寺の本尊として祀られることの多い、メジャーな仏様。「観音さま」と呼ばれ、親しみのある身近な仏様だ。後者の飯綱権現は山岳信仰に発祥を持ち、神仏習合の上に生まれたハイブリッドな神様。不動明王に似た猛々しい姿に描かれたり、天狗の姿を持つ場合がある。薬王院では、飯綱権現の使いとして天狗像が各所に建てられているのが特徴で、天狗伝説や天狗信仰も残っている。

神社様式の本社(権現堂)は建物の周囲全体に彩色を施した彫り物が埋め込まれた美しい建物。正面脇には天狗像が立つ。

高尾山薬王院には大本堂と本社の2つのお堂がある。大本堂は山門をくぐり、石段を上がってすぐの所にある拝殿を持つ本堂。薬師如来像を本尊とし、併せて飯綱権現が祀られている。大本堂の左奥の石段を上がると、美しく彫り物で装飾された本社(権現堂)がある。こちらには飯綱権現が祀られており、山岳信仰としての高尾山の中心。建物は神社様式で正面には鳥居もある。この権現堂の前に立つとき、柏手を打っていいのか、いつも悩むのだが薬王院の境内でもあり、静かに手を合わすようにしている。

稲荷山コースで下山中、道端にキレイなモミジを発見。葉の傷みが少なく、色も鮮やか。12-200mmレンズのテレ端で寄り、撮影した。

標高599mの高尾山山頂は、ちょうどお昼時ということもあり、大混雑。小学校や幼稚園の遠足の子どもたちもレジャーマットを広げ、お弁当を食べている真っ最中だった。晴天の空の向こうに見える富士山を1枚撮ったら、奥高尾方面に山を下る。

急な坂を下りると、奥高尾へと続く尾根の鞍部に出る。そこから少し登ると、視界が大きく開け、遠くに富士山が見える広場に出る。この付近は「もみじ台」と呼ばれ、モミジの木が多く、この時期は木々の葉が鮮やかに染まっている。ここには、「細田屋」という昔ながらの茶店があり、暖かなソバやナメコ汁などがいただける。

高尾山山頂から奥高尾に向かう途中にある「もみじ台」は薬王院境内よりも美しく色づいたモミジを楽しめた。茶店では食事が出来、正面の広場から富士山を遠望できる。

高尾山山頂や薬王院の混雑に比べると、もみじ台は比較的、空いていた。私も細田屋でとろろそばと味噌田楽を注文。富士山を眺めながら、暖かな食事をいただいた。

「もみじ台」から眺める雪化粧をした富士山。右下には相模湖ピクニックランドの観覧車が見える。12-100mmのテレ端、35mm判換算200mm相当できれいにフレーミングできた。元画像ではやや霞んでいたが、RAW現像の際に「かすみの除去」と「明瞭度」で調整を行い、コントラストを高めた。

帰りは6号路を下る予定でいたのだが、問題発生。6号路は災害復旧したばかりで、修復が十分でない場所もあるようで、登りのみの一方通行となっていた。やむを得ず、6号路と平行する稲荷山コースで下山する。植林された杉や檜の多い尾根道で、道はけっこう険しい。昔、稲荷山コースを登ったことがあるが、登りがキツく、道も荒れて、苦労した覚えがある。今回は下りなので、スリップに気をつけつつ、下山した。

高尾山には、山頂に向かう1号路、6号路、稲荷山コースのほかに、山腹をぐるりと回るように、2号路、3号路、4号路、5号路が設けられている。登り始める時間や体力、日の長さに応じて、これらのコースを組み合わせることで、自分に合ったハイキングコースを組み立てられるのが高尾山の魅力。北西にある陣馬山から景信山、小仏峠へと尾根伝いに歩き、高尾山へ至るロングトレイルも楽しい。新緑の時期には、今回と違うルートで高尾山に登ってみようと思う。