35mm一眼レフカメラの標準レンズといえば、50mm。フィルムサイズやセンサーサイズによって、標準レンズとされるレンズの焦点距離は異なるが、概ね対角線の画角が46度前後のものを指す。ちょうど、6月21日に発売された『デジタルカメラマガジン 2021年7月号』で50mm標準レンズが特集されている。
私が持っている、あるいは所有していた標準レンズを思い起こしてみると、キヤノンAE-1と同時期に購入したNew FD50mm F1.8、ペンタックスLXに組み合わせていた smc PENTAX A 50mm F1.4、リコーXR-Pに付けていたXR RIKENON 50mm F2、フィルム時代はこんな感じ。デジタルになってからは、ズームレンズが多く、標準レンズといえる画角を持つレンズといえば、パナソニックのLEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 ASPH. そしてニコンのAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8 Gだ。
個人的には、40mmのレンズを搭載したコンパクトカメラから写真生活をスタートしたこともあり、40mmや35mmのほうが標準レンズという認識が強い。野鳥を探しながら野山を歩く習慣があることから、無意識に見ている範囲が普通の人より広いという点も影響しているかもしれない。私の場合、50mmは少し焦点距離が長めで、絞りを開けて背景をぼかしたいときに使うレンズという位置づけになる。
久しぶりにAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8 GをD7200に付けて、撮り歩いてみた。カメラがAPS-Cセンサーを搭載したDX機なので、35mm f/1.8を装着すると、35mm判換算で52.5mm相当(対角画角44度)になり、肉眼で見ている世界よりもかなり狭い範囲が写るという印象。ここ10年ほど、焦点距離の短いレンズは絞りを絞り、パンフォーカスぎみに撮ることが多かったので、絞りを開ける撮り方は新鮮に感じられた。
50mm前後の焦点距離は、広角レンズに比べて画角が狭まるため、散策中に目にとまったものを切り取るようなスナップ撮影に最適だと思う。35mmや28mmほど踏み込んで撮らなくても画面を整理でき、少し客観的に風景を切り取る。でも、主題をクローズアップで狙うことも可能なので主観的な撮り方もできる。初めて使うと戸惑う画角だが、写真を学ぶ際に50mmレンズを使えという諸先輩方のアドバイスは、実に核心をついている。
最近、フルサイズ機用の明るく、高性能な50mmレンズが、各社から発売されている。でも、個人的には50mm標準レンズは、コンパクトでいつもカメラに付けておきたくなるような控えめなレンズが好みだ。いくら写りがよかろうが、カメラボディより重かったり、フィルター径が77mmを超えるような巨大な50mmはいらない。絞り開放から使える描写力を持っていれば、50mmF1.8や50mmF2でもいいくらいだ。
その点、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8 Gはいい。小ぶりな鏡筒で、邪魔にならない。絞り開放で近接撮影を行うと、2線ボケが気になることがあり、背景を選ぶ必要があるが、それ以外に不満はない。一眼レフの場合、レンズの開放F値が明るいと、ファインダーも明るく見え、心地よさすら感じる。
そういえば、以前カメラMOOKの制作のためにシグマ 30mm F1.4 EX DC HSMを借りたことがある。位置づけの似た1本だが、シグマのものは絞り開放時の描写がソフトで、解像感はAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8 Gのほうが上だった。F1.4という明るさは魅力だが、ニッコールの方が寄れたこともあり、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8 Gを購入するに至った。シグマの30mmは後にリニュアールされ、解像感が向上したと聞くので、今、撮り比べると印象が異なるかもしれない。
もう少し焦点距離の短い単焦点レンズも欲しいと思うが、今からDXフォーマット用にレンズを揃えるのはどうかと思う。やはり、フルサイズミラーレス機の購入まで、その思いは封印しておこう。