今でこそミラーレスカメラ用レンズがサードパーティメーカーからも多数発売され、レンズの選択肢が大きく広がったが、2014年当時はカメラメーカー純正と国内レンズメーカー製の交換レンズ以外にあまり選択肢がなかった。レンズ交換の楽しみを広げるための方法として、マウントアダプターを介して、一眼レフ用レンズをミラーレスカメラで使うというスタイルが注目され、様々なタイプのマウントアダプターが複数のメーカーから発売されるほどであった。
この時期、早いタイミングでマイクロフォーサーズシステム用交換レンズに対応したのがシグマ。3本の単焦点DNレンズを発売した。その後、タムロンが高倍率ズームレンズを投入。これに次ぐタイミングだったと思うが、興和光学(現興和オプトロニクス)が Prominar 8.5mm F2.8 を2014年9月20日を発売した。当時のマイクロフォーサーズ用単焦点レンズの中では最も広い画角(魚眼レンズは除く)が得られた。工業用レンズがベースになっているため、ディストーションがしっかりと補正され、周辺部まで均質な描写が得られる点が大きな特徴だ。
超広角レンズを選ぶとき、解像力の高さや周辺部の描写性能、ゴーストやフレアの発生の有無などチェックすべき項目はいくつもあるが、私がまず注目するのはディストーション(歪曲収差)がしっかりと補正されているかどうか。歪曲収差はデジタルデータ上で簡単に補正できる。しかし、曲がったことが嫌いな江戸っ子としては、デジタル補正に頼るというのは気にくわない。
この超広角レンズで光学的にディストーション(歪曲収差)が抑えられていることは、動画撮影に使う場合にも大きなメリットとなる。カメラをパンしても直線が真っ直ぐに流れ、画面がウネウネと歪んで見えることがない。動画での使用を想定していたことは、絞りリングのクリックをキャンセルさせる機構を持っていることからもわかる。このとき、絞りリングの表記がTナンバーとなり、シネマ用レンズとして使うことができる。
Prominar 8.5mm F2.8 は35mm判換算で17mm相当の画角が得られる超広角レンズ。14群17枚とこのクラスのレンズとしては複雑な光学設計になっている。XD(特殊低分散)レンズで色収差を低減し、非球面レンズを採用することで像面湾曲を防ぎ、周辺部までしっかりとピントの合ったシャープな像が得られるよう配慮されている。このレンズ、ピントの合った面は非常にシャープで、気持ちよいのだが、背景のボケはあまり美しくない。そのため、やや絞ってパンフォーカスで撮るのが、このレンズに合った使い方だと思う。
クラシカルなデザインの金属鏡筒はソリッドな感じがよい。フォーカスリングは滑り止めの樹脂を巻かず、リングに溝を刻むスタイルで、操作感は申し分ない。マウント部に電気接点はなく、EXIFにレンズ名や絞り値は記録されない。OM-DやPENのボディ側で、レンズを登録してあげれば、焦点距離に合った手ブレ補正効果は得られる。
樹脂製の花形フードは、レンズ先端にかぶせるタイプで、フード側にフィルターを付ける構造になっている。ぐらつくことはないが、直径が大きいので収納に苦労する。そのフィルター径は86mm! 念のため保護フィルターは購入したが、PLフィルターまでは手が出ない。
このProminar 8.5mm F2.8には姉妹機として、12mm F1.8、25mm F1.8があり、いずれもブラック、シルバー、グリーンの3色展開で発売された。このグリーンは、興和光学の双眼鏡やフィールドスコープに共通するシンボルカラー。同社に敬意を払う意味もあり、グリーンを選んだ。黒いボディのOM-Dとシックなグリーンのレンズのコンビネーションはなかなかいいと思う。