カルガモのヒナの次はカイツブリのヒナを見ようと、東京都立石神井公園へ。ボート遊びのできる石神井池と周囲に木が生い茂る三宝寺池の2つの池を擁する大きな公園で、カワセミが見られる公園としてよく知られている。かく言う私もカワセミを初めて撮影したのは石神井公園だった。
お目当てのカイツブリを観察できるのは、主に石神井池の方。池の畔を歩いていると、すぐに水面にいるカイツブリを発見。ヒナを連れたカイツブリを探す。
石神井池を一周するうちにカイツブリの親子がいるエリアを特定できたので、池を見渡せる場所でジッと動かず、シャッターチャンスが訪れるのを待つ。ヒナたちはしばらく子ども同士で遊んでいたが、親鳥が呼ぶと、その後を追って泳ぎ始めた。突然、親鳥が水の中に潜ると、ヒナたちは泳ぐのを止め、その場に待機。しばらくすると親鳥が浮上してきた。
1羽のヒナが親鳥に駆け寄ると、給餌を始めた。今日のご馳走はなんだろう。撮影した画像を拡大してみたがハッキリとしない。一般的には小魚かエビだと思うのだが。2羽のヒナに、それぞれ3回ほどエサを与えると親鳥はヒナを引き連れ、人の目が届かない池の奥へと消えていった。石神井池への滞在時間は1時間ほどであったが、タイミングよく給餌シーンが撮れた。
石神井公園のもう1つの池、三宝寺池も覗いて行こう。こちらはカワセミが飛来することで知られており、三脚に載せられた白い超望遠レンズがズラリと並ぶ様をよく見たものだ。その威圧感は強烈で、うっかり近づくと、ジロリと睨まれたりする。しかし、この日は撮影ポイントには誰もいない。環境の変化で、カワセミが寄りつかなくなったのだろうか。
先に進むと、池の畔でカメラを構える人が10人ほど。カワセミはこっちに来ているのかなと思い、彼らがレンズを向けている先を見ると、アオサギが1羽!? 何か珍しい鳥でもいるのかと思ったら、どこにでもいるアオサギだったので、拍子抜けした。
私もアオサギはよく撮っている。以前住んでいた香川県では、どこにでもいるアオサギを撮る人は少数派で、気にも留めないカメラマンが多かった。それが、東京では多くのカメラマンの目を惹きつける人気者となっているようで、可笑しかったのだ。周囲に水田があるわけでもない都会では、アオサギは珍しい鳥なのだろう。
もう1つ野鳥を撮るカメラマンの姿を見て気づいたのだが、三脚を使っている人がいなかった。レンズも大口径ではなく、超望遠ズームレンズばかり。各社とも高感度性能が向上し、手ブレ補正機構が進化したことで、超望遠撮影でも三脚を必要としないカメラマンが増えたのだろう。わずか10年ほどの間に、野鳥撮影を取り巻く環境が大きく変化したことに驚かされる。