4月に入り、沢沿いの山道を歩いていると足元に咲く白い花に目を奪われる。
シャガと呼ばれるこの花は、日当たりのよい場所ではあまり見ないが、日当たりのよくない公園の隅、山の斜面など日陰に咲くことが多い。6枚の花びらが垂れ下がるように咲く姿はアヤメに似ている。シャガはアヤメ科に属しており、姿が似ているのは当然。ただ、花が見ごろになるとニュースで取り上げられるアヤメやハナショウブ、カキツバタと違い、話題になることのない地味な花のように思う。
個人的には、色の濃いアヤメやカキツバタは離れた所から群落を撮るのであればいいが、あまり近づいて撮りたいとは思わない。むしろ、淡い色合いで日陰にそっと咲く、シャガを愛おしく思う。この時期、野山を歩き、その姿を見つけると思わずしゃがみ込み、カメラを向けてしまう。
シャガは、同じアヤメ科のアヤメやハナショウブなどと違い、中国原産の外来種だという。日本に伝わった時期はよく分からないが、古代にもう入っていたという話もある。種子植物だが、種で増えない三倍体の植物で、根茎を伸ばして増える。ヒガンバナやスイセンも同じタイプ。広範囲に種を散らすのではないため、一面に株が広がるという増え方をする。
シャガは1本の茎にいくつも花が付くが、花は咲いても1日で枯れてしまうようだ。種も付けないのに、どうして花が咲くのだろう。花粉を運んでくれる虫が来ても、受粉につながらないのでは、花の役割を果たさないと思うのだが。それにしても、種で増えないのであれば、ヒガンバナのように、人の手によって全国に広がったのだろうか。有用性を感じないシャガがなぜ全国に広がっているのか、不思議でならない。