奈良原一高氏と28mmレンズ

写大ギャラリーの近く、山手通り沿いの成願寺の山門と中野坂上の高層ビル。

今、東京・中野坂上に近い東京工芸大学の「写大ギャラリー」で、奈良原一高氏の写真展「宇宙への郷愁」(11月20日まで)が開催されている。重厚なテーマで作品を撮り続けた日本を代表する写真家のひとり。氏は長い闘病の末、昨年1月に亡くなられている。彼の計算された構図、フレーミングに惹かれ、特に広角レンズで撮影するときは、彼の作品を意識することが多い。代表作は、これまでにも写真展や写真集で見てきたが、静かなギャラリーでプリントをじっくりと鑑賞した。

奈良原氏を初めて知ったのは、カメラ雑誌「CAPA」の誌面でのこと。当時の雑誌は処分してしまったので、記憶に頼るのみだが、28mm広角レンズのススメ的な記事の中で、彼が作品を見せながら、28mmレンズの魅力を語っていたのだ。この記事に強い衝撃を受けた私は、35mmでは画角が足りない、28mmレンズこそ広角レンズの王道だと考えるようになり、28-70mmズームレンズを導入することとなったことは、以前、少し書いた。

35mm判換算で28mm相当の画角を持つリコーGR。レンズが28mm相当であることが、このカメラを使い続ける理由でもある。

奈良原氏の作品の中で、好きな作品は、広角レンズで撮ったものが多い。レンズは28mm? それとも24mmか? パースペクティブを効かせながら、広い画角を巧みに使った画面構成で、観る者を引きつける。写真展を観て、改めて自分でもそんな写真が撮りたいと、帰り道、リコーGRを手に神田川沿いを歩いた。

青梅街道は神田川を淀橋で渡る。ビルの谷間にあって、川の位置が分かりにくいが、正面の車が何台か停車している下を流れている。縦位置でビルの上の方がすぼんで写るのが広角レンズの特徴の1つ。
淀橋の1本下流側の栄橋。川岸のマンション。その向こうに立つ高層マンションとクレーン。手前にはそれらと対照的に存在価値を失い、廃棄された自転車とゴミ。水平にカメラを構えると、画面上の方がすぼまず、自然に撮れる
さらに下流に向かって歩いた所にある柏橋。ここから西新宿方向を眺めると、フォークソングに歌われた古き神田川ではなく、現代の神田川、という印象に。
街路樹に秋の気配。リコーGRのマクロモードで。
中央線沿いにあるJR東日本の変電所の壁。薄いグリーンの壁に街路樹の影が映り、美しい模様に。