あきる野散策 #1|龍角山広徳寺

龍角山広徳寺の山門

西武線で拝島まで行き、JR五日市線で終点の武蔵五日市駅へ。秋川渓谷や檜原村へ出かける際、あるいは御岳山から日の出山・金毘羅尾根を巡るルートを選んだとき、この駅をよく利用する。檜原の山から深い谷を刻んで流れてきた秋川が、広い平地に出た場所がこの五日市で、物資の集散地として古くから栄えていた。五日市の名は檜原村の炭の販売や周辺地域の生活用品を売るための市が五日に開かれたことから名付けられたと聞く。そうしたことから、歴史のある神社仏閣が多く集まっている。今回は五日市から秋川の南側に渡った山懐に建つ、臨済宗の龍角山広徳寺を訪ねてみよう。

五日市の町は秋川の段丘上にあり、秋川を渡るためには一度、谷底に降りる。秋川に架かる小和田橋を渡り、段丘上にある広徳寺へは急な坂道を登る。住宅地となっている五日市周辺と比べ、この小和田の集落は農地が多く残り、静かな農村の雰囲気を残している。集落の南端、森に囲まれるように龍角山広徳寺がある。禅寺らしい質素な造りの総門の脇を抜けると、巨大な山門が現れる。門の両脇に仏像を持たない簡素な造り(門の上層に仏像があるのかもしれないが不明)だが、総門同様、茅葺きの屋根は風格があり、美しい。

左側と本殿と右側の庫裏とに跨がるように作られた巨大な茅葺きの屋根。SIGMA dp2 Quattro

山門を抜けた正面に巨大な茅葺き屋根が現れる。本殿と庫裏が並んで建っており、間の廊下の屋根も一体化され、圧倒的なボリュームで迫ってくる。主棟(屋根上部の張り出した部分)には北条家の家紋、ミツウロコが掲げられている。戦国武将、北条氏康がこの禅寺の再建に尽力したということに由来するようだ。

山門と本殿の間、参道の両脇に巨大なイチョウの木がそびえる。SIGMA dp2 Quattro

広徳寺は建物の美しさもさることながら、境内の2本のイチョウの木の見事さでも知られている。イチョウの葉が色づく晩秋には、たくさんのカメラマンが押し寄せるという。新緑の時期でもこの美しさ。紅葉の時期はさらに美しさが増すことは十分、想像できる。この境内に黄色い葉のジュウタンに覆われる姿も見てみたいものだ。